はじめに
みなさん、こんにちは!ローカルPCでAgent Development Kit (ADK)を触り始めた皆さんは、「これを本格的に運用するにはどうしたらいいんだろう?」と考えたことはありませんか?あるいは「Google Cloudでエージェントを動かしたいけど、一体どこから手をつければ良いの?」と悩んでいませんか?
本記事では、ローカル環境での実験を卒業し、Vertex AI Agent Engineを活用した本格的なLLMエージェントシステムの構築方法をご紹介します。特に注目すべきは、「コーディネータ」と複数の「スペシャリスト・サブエージェント」による分業体制。この構造により、複雑なタスクでも整理され、効率的に処理できるシステムが実現できます。
私たちが作成するデータ分析支援エージェントは、ユーザーからの自然言語の要求を理解し、適切なデータタイプの選択、分析用語の提案、グラフタイプの選定、分析プロンプトの生成まで、一貫したワークフローで自動化します。しかも、日本語ならではの親しみやすい対話を通じて、ユーザーの分析業務をサポートします。
「ADKは触ってみたけど、実用レベルにするには何が必要?」という疑問にお答えする、実践的な手順とコードをお届けします。さあ、理論から実装、そしてクラウドデプロイまで、一緒に踏み出していきましょう!
対象読者
- ローカルPCでADKを少しだけ触ったことがある方
- Google Cloudを利用してAgent開発を進めていきたい方
Vertex AI Agent Engineとは
Vertex AI Agent Engine(旧称 LangChain on Vertex AI、Vertex AI Reasoning Engine)は、デベロッパーが本番環境で AI エージェントをデプロイ、管理、スケーリングできるようにするフルマネージド サービスです。 Google Cloud Agent Engine は、本番環境でエージェントをスケーリングするインフラストラクチャを処理するため、インテリジェントで効果的なアプリケーションの作成に集中できます。(Vertex AI Agent Engine公式ドキュメント)
エージェントシステムの設計思想
「分業」と「専門性」がもたらす効率と品質
私たちが直面していた課題は明確でした。データ分析を支援するLLMエージェントは、幅広い知識と複数の判断を同時に求められます。単一のモノリシックなエージェントでは、これらすべての役割を高い品質で担うことが難しいのです。
この課題に対する答えが、今回採用した「コーディネータ+スペシャリスト」アーキテクチャです。人間の組織と同様に、それぞれが得意分野に集中することで、システム全体のパフォーマンスが向上します。
コーディネータの役割
コーディネータは「司令塔」としての役割を担います。ユーザーからの要求を最初に受け取り、その意図を解析します。重要なのは、コーディネータ自身は具体的な回答を生成しないこと。代わりに、どのスペシャリストに任せるべきかを判断し、タスクを適切に振り分けます。
このアプローチにより、コーディネータは複雑な要求を整理し、必要に応じて複数のスペシャリストに並行してタスクを割り当て、最終的に結果を統合して一貫した回答をユーザーに提供できます。
5つのスペシャリスト・サブエージェント
各サブエージェントは明確に定義された責任領域を持ちます。
- DataTypeSuggester: ユーザーの分析要求に最適なデータタイプを提案します。時系列データか、カテゴリデータか、地理空間データかなど、分析の基盤となる情報を特定します。
- PeriodSuggester: ユーザーの分析要求に最適な分析期間を提案します。
- GraphTypeSuggester: データの可視化に最適なグラフタイプを提案します。棒グラフ、折れ線グラフ、散布図など、データの特性と分析目的に合わせた推奨を行います。
- PromptSuggester: 分析に必要な具体的なプロンプトを生成します。サブエージェントからの情報を統合し、データ分析ツールへの入力となる適切なプロンプトを構築します。
- FinishNotification: 分析の完了を知らせ、結果を整理して提示します。ユーザー体験を向上させるための重要な役割を担います。
マルチエージェントシステムの構築
エージェントの全体像

筆者の開発環境
PC: MacBook Air
OS: Sonoma 14.6.1
チップ: Apple M2
Memory: 16GB
パッケージ管理: uv
構築環境準備
- google-adkをインストール
uv add google-adk
サブエージェントの構築
まず、システムの中核となる各サブエージェントの構築から始めています。例として、データタイプ提案エージェントの実装を見てみましょう。
datatype_suggester = LlmAgent(
name="DataTypeSuggester",
description="""
The user can suggest the appropriate DataType
for the content he/she wants to analyzeAgent
""",
instruction=DATATYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION,
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
output_schema=OutputSchema,
disallow_transfer_to_parent=True,
disallow_transfer_to_peers=True,
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=1,
max_output_tokens=8192,
),
)
ここでは、Google ADKのLlmAgent
を使用して特化型エージェントを作成しています。各エージェントには下記のパラメータを設定しています。
- 識別用の
name
- エージェントの役割を説明する
description
- 実際のタスク指示となる
instruction
(別ファイルから読み込み) - 使用するLLMモデル(この場合は
gemini-2.5-flash-preview-04-17
) - レスポンスのフォーマットを統一するための
output_schema
(別ファイルから読み込み) - エージェント間のコミュニケーション制御フラグ
- モデル生成パラメータ設定
同様のパターンで、期間提案、グラフタイプ提案、プロンプト提案、完了通知の各エージェントも構築してきます。
コーディネータエージェントの構築
次に、これらのサブエージェントを統括するコーディネータエージェントの実装を見てみましょう。
coordinator = LlmAgent(
name="Coordinator",
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
description="""
The Coordinator Agent functions as a central hub
that intelligently analyzes incoming requests and routes
them to specialized sub-agents for processing.
Rather than attempting to handle tasks directly,
the Coordinator's primary responsibility is to properly understand,
categorize, and distribute work across a network of specialized agents.
""",
instruction=COORDINATOR_INSTRUCTION,
global_instruction="""
ユーザーは自社データを使用した分析をするために独自のWebツールを使用し
ダッシュボードを作成しようとしています。
あなたはデータ分析のプロとしてユーザーが分析したい内容に適した情報を
選択する手伝いをしてください。
""",
sub_agents=[
datatype_suggester,
period_suggester,
graphtype_suggester,
prompt_suggester,
finish_notification,
],
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=0,
max_output_tokens=8192,
),
)
コーディネータの実装で重要なポイントは下記3点になります。
sub_agents
パラメータで先ほど定義した5つのサブエージェントを接続している点global_instruction
でシステム全体のコンテキストを設定している点- 特化型エージェントと異なり、
temperature=0
と設定することで一貫した調整を実現している点
最後に、システムのエントリーポイントとして、
root_agent = coordinator
と定義して、このコーディネータをシステムのルートとして設定します。
エージェント間の連携の仕組み
コードからわかるように、このAgentシステムは階層構造になっています。
- ユーザーからのリクエストはまず
coordinator
に届きます - コーディネータは
COORDINATOR_INSTRUCTION
に基づいてリクエストを分析し、適切なサブエージェントに転送します - 各サブエージェントは専門領域に特化した処理を行い、統一された
OutputSchema
に従って結果を返します disallow_transfer_to_parent=True
やdisallow_transfer_to_peers=True
の設定により、エージェント間の通信制御が行われています
このように、Google ADKを利用することで、複雑なエージェント間のオーケストレーションをシンプルなコードで実現できています。各エージェントは専門領域に集中し、コーディネータがそれらをまとめ上げることで、ユーザーのデータ分析ニーズに応える柔軟なシステムが構築されています。
解説では1つのスペシャリストとコーディネータのみとなってしまいましたが、コード全体も紹介しますので、是非全てのAgentを構築してみて下さい!
Agentのコード全体
- ディレクトリ構成
.
└── multi_agent
├── __init__.py
├── agent.py
├── libs
│ ├── __init__.py ※空ファイル
│ ├── instruction.py
│ └── schema.py
├── pyproject.toml
└── uv.lock
- __init__.py ※multi_agentディレクト直下の__init__.py
from . import agent
- agent.py
from google.adk.agents import LlmAgent
from google.genai import types
from libs.instruction import (
COORDINATOR_INSTRUCTION,
PERIOD_SUGGESTER_INSTRUCTION,
GRAPHTYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION,
DATATYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION,
PROMPT_SUGGESTER_INSTRUCTION,
FINISH_NOTIFICATION_INSTRUCTION,
)
from libs.schema import OutputSchema
datatype_suggester = LlmAgent(
name="DataTypeSuggester",
description="""
The user can suggest the appropriate DataType
for the content he/she wants to analyzeAgent
""",
instruction=DATATYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION,
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
output_schema=OutputSchema,
disallow_transfer_to_parent=True,
disallow_transfer_to_peers=True,
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=1,
max_output_tokens=8192,
),
)
period_suggester = LlmAgent(
name="PeriodSuggester",
description="""
The user can suggest the appropriate analyze period
for the content he/she wants to analyzeAgent
""",
instruction=PERIOD_SUGGESTER_INSTRUCTION,
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
output_schema=OutputSchema,
disallow_transfer_to_parent=True,
disallow_transfer_to_peers=True,
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=1,
max_output_tokens=8192,
),
)
graphtype_suggester = LlmAgent(
name="GraphTypeSuggester",
description="""
The user can suggest the appropriate GraphType
for the content he/she wants to analyzeAgent
""",
instruction=GRAPHTYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION,
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
output_schema=OutputSchema,
disallow_transfer_to_parent=True,
disallow_transfer_to_peers=True,
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=1,
max_output_tokens=8192,
),
)
prompt_suggester = LlmAgent(
name="PromptSuggester",
description="""
The user can suggest the appropriate prompt
for the content he/she wants to analyzeAgent
""",
instruction=PROMPT_SUGGESTER_INSTRUCTION,
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
output_schema=OutputSchema,
disallow_transfer_to_parent=True,
disallow_transfer_to_peers=True,
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=1,
max_output_tokens=8192,
),
)
finish_notification = LlmAgent(
name="FinishNotification",
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
description="Notify me when the analysis is ready.",
instruction=FINISH_NOTIFICATION_INSTRUCTION,
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=1,
max_output_tokens=8192,
),
)
coordinator = LlmAgent(
name="Coordinator",
model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
description="""
The Coordinator Agent functions as a central hub
that intelligently analyzes incoming requests and routes
them to specialized sub-agents for processing.
Rather than attempting to handle tasks directly,
the Coordinator's primary responsibility is to properly understand,
categorize, and distribute work across a network of specialized agents.
""",
instruction=COORDINATOR_INSTRUCTION,
global_instruction="""
ユーザーは自社データを使用した分析をするために独自のWebツールを使用し
ダッシュボードを作成しようとしています。
あなたはデータ分析のプロとしてユーザーが分析したい内容に適した情報を
選択する手伝いをしてください。
""",
sub_agents=[
datatype_suggester,
period_suggester,
graphtype_suggester,
prompt_suggester,
finish_notification,
],
generate_content_config=types.GenerateContentConfig(
temperature=0,
max_output_tokens=8192,
),
)
root_agent = coordinator
- instruction.py
COORDINATOR_INSTRUCTION = """
あなたはユーザーのメッセージを元に適切なAgentにタスクを割り当てるコーディネータです。
あなたの役割はサブエージェントを効果的に活用し、分析フローを正しい順序で実行することです。
# 最重要事項
* どのような場合でも、あなた自身でユーザーの質問に回答してはいけません。必ずサブエージェントを呼び出してください。
* 各ステップでは必ず対応するサブエージェントを呼び出し、そのサブエージェントからユーザーへの返答を促してください。
* 全てのパラメータが決定した場合、必ず「FinishNotification」エージェントを呼び出してください。
# 遵守事項
* ユーザーへはあなたが直接返答するのではなく、必ずあなたが呼び出すことができるSub Agentから返答させるようにすること
* 全てのパラメータが決定した場合、必ず「FinishNotification」をcallすること
# 分析ステップと対応するサブエージェント
1. Step1: DataType Determination - datatype_suggester エージェントを必ず呼び出す
2. Step2: Prompt Determination - prompt_suggester エージェントを必ず呼び出す
3. Step3: Analyze period Determination - period_suggester エージェントを必ず呼び出す
4. Step4: GraphType Determination - graphtype_suggester エージェントを必ず呼び出す
5. Finish: 全パラメータが決定したとき - finish_notification エージェントを必ず呼び出す
# サブエージェント呼び出しの詳細
* datatype_suggester: 分析対象データソースを決定する際に呼び出す ※userからのmessageをパラメータとして受け取る
* period_suggester: 分析対象の期間を決定する際に呼び出す
* graphtype_suggester: 分析対象のグラフタイプを決定する際に呼び出す
* prompt_suggester: 分析に適したSQLをAIが生成するための自然言語のプロンプトを決定する際に呼び出す
* finish_notification: 分析に必要な準備が整った旨を通知する際に呼び出す - 全パラメータが決定した後に必ず呼び出す
# サブエージェント選択のロジック
* まだデータタイプが決まっていない場合、まず datatype_suggester を呼び出します
* データタイプが決まったら、prompt_suggester を呼び出します
* プロンプトが決まったら、period_suggester を呼び出します
* 期間が決まったら、graphtype_suggester を呼び出します
* 全てのパラメータが決まったら、finish_notification を呼び出します
# エラーハンドリング
* サブエージェントの呼び出しに失敗した場合は、再度同じサブエージェントを呼び出してください
* 3回試行しても失敗する場合は、別のサブエージェントに切り替えてワークフローを続行してください
# フロー制御の原則
* スキップしたステップがあれば、後で戻って処理してください
* パラメータの値に矛盾がある場合は、最新の情報を優先してください
* パラメータが不明確な場合は、適切なサブエージェントを呼び出して明確にしてください
このプロセスに必ず従ってください。サブエージェントを確実に呼び出すことがこのシステムの最も重要な要件です。
"""
SELECT_GRAPHTYPE_PROMPT = """
利用可能グラフタイプの中から今回の分析に適したグラフタイプを導き出してください。
※おすすめの項目と理由を3つ程度ユーザーに伝えること
# 利用可能グラフタイプ
{label: 棒グラフ, value: bar}
{label: 積み上げ棒グラフ, value: stackBar}
{label: 折れ線グラフ, value: line}
{label: 円グラフ, value: pie}
{label: 表形式, value: table}
{label: 複合グラフ, value: mix}
{label: レーダーチャート, value: radar}
※複合グラフは、棒グラフと折れ線グラフの複合
"""
DATATYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION = """
あなたはユーザーの分析ニーズに最適なデータタイプを選択するエージェントです。
あなたの役割は、 選択可能なデータタイプから最適なデータタイプを提案することです。
# 選択可能なデータタイプ
{label: 売上データ, value: sales}
{label: 顧客データ, value: customers}
"""
PERIOD_SUGGESTER_INSTRUCTION = """
あなたはユーザーの分析ニーズに最適な期間を選択するエージェントです。
あなたのの役割は、「選択可能な期間」から適切な分析期間を提案することです。
# 選択可能な期間
{label: 直近1年間, value: last_year}
{label: 直近6ヶ月間, value: last_6_months}
{label: 直近3ヶ月間, value: last_3_months}
{label: 直近1ヶ月間, value: last_month}
"""
GRAPHTYPE_SUGGESTER_INSTRUCTION = """
あなたはユーザーの分析ニーズに最適なグラフタイプを選択するエージェントです。
あなたのの役割は、「利用可能グラフタイプ」から適切な分析期間を提案することです。
# 利用可能グラフタイプ
{label: 棒グラフ, value: bar}
{label: 積み上げ棒グラフ, value: stackBar}
{label: 折れ線グラフ, value: line}
{label: 円グラフ, value: pie}
{label: 表形式, value: table}
{label: 複合グラフ, value: mix}
{label: レーダーチャート, value: radar}
※複合グラフは、棒グラフと折れ線グラフの複合
"""
PROMPT_SUGGESTER_INSTRUCTION = """
ユーザーが分析したいデータを取得するためのSQLを生成AIに作らせるためのプロンプトを作成してください。
SQL自体を生成するのではなく、SQLを生成するための自然言語のプロンプトを生成してください。
"""
FINISH_NOTIFICATION_INSTRUCTION = """
分析の準備が完了したことを通知するエージェントです。
"""
- schema.py
from pydantic import BaseModel, Field
class OutputSchema(BaseModel):
message: str = Field(description="ユーザーへのメッセージ")
lebel: str = Field(description="選択したデータのlabelを設定")
value: str = Field(description="選択したデータのvalueを設定")
Vertex AI Agent Engineへデプロイ
ここでは、先ほど構築したエージェントを使用するためにGoogle CloudのVertex AI Agent Engineにデプロイしていこうと思います。
エージェントを実行する方法は、Agent Engineの他にもGoogle CloudのCloud Run、GKEなどでも可能です。(詳細は公式ドキュメントをご参照ください。)
- gcloudの設定
gcloud config set project [Google CloudプロジェクトID]
gcloud auth application-default login
- google-cloud-aiplatform[agent-engines]をインストール
uv add 'google-cloud-aiplatform[agent-engines]'
- 環境変数設定
export PROJECT_ID=[Google CloudプロジェクトID]
export LOCATION=us-central1
export STAGING_BUCKET_NAME=gs://[Cloud Storageのバケット名]
- Agent Engineにデプロイするためのコード(deplot.py)の作成
import os
import vertexai
from vertexai import agent_engines
from agent import coordinator
vertexai.init(
project=os.environ.get("PROJECT_ID"),
location=os.environ.get("LOCATION"),
staging_bucket=os.environ.get("STAGING_BUCKET_NAME"),
)
remote_agent = agent_engines.create(
coordinator,
requirements=[
"google-cloud-aiplatform[agent_engines,adk]",
"pydantic",
],
extra_packages=["libs"],
# env_vars={
# 他の環境変数が必要な場合はここに記載
# 記載例)
# "BQ_DATASET_ID": os.environ.get("BQ_DATASET_ID"),
# },
)
- デプロイコード実行
python deploy.py
- デプロイ成功時のメッセージ
AgentEngine created. Resource name: projects/[プロジェクト番号]/locations/us-central1/reasoningEngines/[AgentEngine ResourceID]
To use this AgentEngine in another session:
agent_engine = vertexai.agent_engines.get('projects/[プロジェクト番号]/locations/us-central1/reasoningEngines/[AgentEngine ResourceID]')
agent_engine = vertexai.agent_engines.get('projects/[プロジェクト番号]/locations/us-central1/reasoningEngines/[AgentEngine ResourceID]')
利用方法
上司から売上分析依頼をされたと想定して、コーディネータにどんなデータを使用するべきか質問してみましょう。
なお、Vertex AI AgentEngineに質問を送信するために下記のコードを使用します。messageの部分のテキストを質問内容に置き換えて実行してみて下さい!
- Session発行
Vertex AI Agent Engine にデプロイされた ADK エージェントでマネージド セッションを利用できるのは2025/5/18時点で「us-central1」のみになります。
from vertexai import agent_engines
RESOURCE_ID = "[デプロイした際にメッセージに出力されたAgentEngine ResourceID]"
USER_ID = "user1"
agent = agent_engines.get(RESOURCE_ID)
session = agent.create_session(user_id=USER_ID)
print(session["id"])
- Vertex AI Agent Engineにクエリ発行
from vertexai import agent_engines
USER_ID = "user1"
RESOURCE_ID = "[デプロイした際にメッセージに出力されたAgentEngine ResourceID]"
SESSION_ID = "[発行したSessionID]"
agent = agent_engines.get(RESOURCE_ID)
for event in agent.stream_query(
user_id="user1",
session_id=SESSION_ID,
message='[送信するメッセージ]
):
print(event)
質問①
上司から今月の売り上げを分析してって依頼されたんだけど、どんなデータタイプ使えば良いかな?
Agentから返却された応答メッセージ①
{'content': {
'parts': [
{'text': {
"message": "今月の売り上げ分析ですね。「売上データ」が最適です。
売上推移や商品別の売上などが分析できます。",
"lebel": "売上データ",
"value": "sales"
}
}
],
'role': 'model'
},
'invocation_id': 'e-55be0b66-6b3f-41a8-b9c8-4c0bde42fa02',
'author': 'DataTypeSuggester',
'actions': {
'state_delta': {},
'artifact_delta': {},
'requested_auth_configs': {}
},
'id': 'u8kjXbvE',
'timestamp': 1747542466.494033
}
使用すべきデータを提案してくれていますね!メッセージをよく見ると「author」に「DataTypeSuggester」が設定されていますね。この内容からコーディネータが適切なサブエージェント(DataTypeSuggester)にタスクを振り分け、タスクを与えられたエージェントが回答していることがわかります。
次にエージェントが提案してくれたデータタイプを使用することに決めたとエージェントに伝えてみましょう。また、次に何をすべきかも教えてもらおうと思います。
質問②
売り上げデータを使用することに決めたよ!次は何を考えれば良いかな?
Agentから返却された応答メッセージ②
{'content': {
'parts': [
{'text': {
"message":
"売り上げデータを使うことに決めたのですね!素晴らしい選択です。
次に、具体的に**今月の売り上げについてどのような分析をしたいか**を
考える必要があります。例えば、
* **今月の総売り上げを知りたい**
* **日ごとの売り上げの推移を見たい**
* **どの商品が一番売れているか知りたい**
* **地域別の売り上げを知りたい**
* **前月と比較したい**
など、分析の目的によって取得すべきデータが変わります。
どのような情報が必要か教えていただけますか?
それがSQLを生成するためのプロンプト作成に役立ちます。",
"lebel": "分析目的の具体化",
"value": "specify_analysis_goal"
},
}],
},
'role': 'model'
},
'invocation_id': 'e-6422ab32-a053-4120-9d81-e80fb78d12e6',
'author': 'PromptSuggester',
'actions': {
'state_delta': {},
'artifact_delta': {},
'requested_auth_configs': {}
},
'id': 'VurKsB1z',
'timestamp': 1747542543.228773}
今度はPromptSuggesterが呼び出されていることがわかります。また、質問内容を深掘りしようともしてくれていますね。このように、ユーザーからの質問に応じてコーディネータが適切なエージェントにタスクを割り当て、タスクを割り当てられたエージェントは提案や追加の質問を行うという動作を実現することができました。
まとめと今後の展望
得られた知見
今回、Vertex AI Agent Engineを活用したLLMエージェントシステムの構築を通じて、いくつかの重要な知見を得ることができました。
まず、コーディネータとスペシャリスト・サブエージェントの分業構造で、役割に沿ったタスクの振り分け実行を行うことが可能だということが分かりました。各エージェントが特定の領域に集中することで、応答の質が向上し、より正確な分析提案が可能になりました。特にデータ分析という多面的な知識を要する分野において、この分業アプローチは大きな価値を発揮しています。
また、ADKとVertex AI Agent Engineの組み合わせにより、ローカル開発から本番環境へのシームレスな移行が実現しました。開発サイクルが短縮され、イテレーションの速度が向上したことで、より迅速に実用的なシステムを構築できました。
日本語でのインタラクションを重視した設計は、ユーザーからの反応も良好で、技術的な内容を扱いながらも親しみやすさを実現できました。これは、AIシステムの採用においてUXが重要な要素であることを改めて示しています。
今後の改善点
一方で、現在のシステムにはいくつかの課題も残されています。
まず、エージェント間の連携においてまれに発生する情報の欠落や重複があり、これを最小化するためのプロンプト設計とエラーハンドリングの改善が必要です。特に複雑な分析要求に対して、各サブエージェントの出力をより統合的に調整する機構が求められます。
また、現在のシステムでは主に事前に定義されたデータタイプや分析手法に基づいて提案を行っていますが、より柔軟にユーザー固有のデータ特性を学習し、パーソナライズされた提案を行える仕組みも検討すべきでしょう。
さらに、処理速度の面では、特に複数のサブエージェントを並列で活用する際のパフォーマンス最適化も今後の課題です。
将来の展望
今後の発展方向として、以下のような可能性を考えています:
- マルチモーダル対応: 現在のテキストベースの対話に加えて、画像やグラフを直接入力として受け取り、視覚的データからも分析提案を行えるようにする拡張が考えられます。
- ドメイン特化型サブエージェント: 金融、マーケティング、製造業など、特定産業に特化したスペシャリスト・エージェントを追加することで、より専門的な分析提案が可能になります。
- 自己学習機能: ユーザーのフィードバックを取り入れ、提案の精度を継続的に向上させる仕組みを実装することで、システム全体の知能を高められるでしょう。
- データソース連携の拡充: 社内データベースやBIツールと直接連携し、リアルタイムデータに基づいた分析提案を行える機能も魅力的です。
- 説明可能性の強化: AIの提案理由をより詳細に説明できる機能を追加することで、ユーザーの信頼と理解を深める取り組みも重要です。
おわりに
本記事で紹介したアプローチは、単にデータ分析支援に限らず、さまざまな複雑なタスクを処理するAIシステムの設計パターンとして応用可能です。コーディネータとスペシャリストの分業構造は、多くの業務プロセスの自動化に適用できるでしょう。
ぜひ皆さんも、Vertex AI Agent Engineを活用したLLMエージェントの開発に挑戦してみてください!